鬼ブログ
海外のTENKARA USA というテンカラ竿メーカーが、テンカラの本を作るので、原稿を書いてね、との依頼が昨年あった。本にのせるので、他では紹介しないでと、契約書にサインまでさせられた。
その原稿が、ようやく期限が切れお見せできるようになったので、紹介しておく。
あっ、私は口で話しただけで、書いたのは鬼嫁です。
彼女のほうが早い。
さて、今年もフィッシングショー大阪へ行きます。2月の4日の土曜日を予定しています。鬼竿を触ってみたい方、連絡ください。下記のアドレスまで連絡ください。
もちろん、買わなくてもいいですからね、気楽にどうぞ。下は、原稿です。
気取られるな!(けどられるな)
語り手 榊原正巳 代筆 鬼嫁
????? 私のアプローチの一番大切な部分は、すべて父から教わったものばかりだ。
私の父、榊原芳男は、とても優秀な機械職人であり、そして、家族をとても大切にする人であった。
父、芳男は、大正11(1922年)生まれ。第二次世界大戦にも召集され、国の一兵として従軍している世代だ。
日本が敗戦した昭和20年(1945年)頃に父は結婚し、戦後の食糧難の時代に、大勢の家族を養った。戦後の日本は、都市部ではそれは厳しい生活を余儀なくされたが、私が生まれ育った静岡県榛原郡森町(遠州森町)は、遠州の小京都と言われる、静かな田舎町だ。田畑が延々と続き、海へと続く太田川(日本の二級河川 ※注A)が流れていた。当時の森町は、空襲の被害を受けていなかったので、田畑では野菜が採れ、川からは鮎やアマゴ、ウナギなどの川魚が獲れた。
私は1951年生まれ。焼け跡から復興し、国民総生産力(GNP)が世界第2位にまで飛躍するようになった、日本の高度成長期(1954年?1973年)真っ只中に、幼児期から青年期までを過ごしている。日本中がヒステリーになり、「働け」「働け」という時代、父もその一人で、懸命に働いた。けれども、たまの休日には家族を大切にし、長男である私とよく遊んでくれた。
あれは、10歳の頃だったか。「まさみ、渓流釣りに行くぞ」
大きな荷台のある自転車の後部席に私をのせ、親父は黙って自転車をこいだ。小さかった私には父の背中はとても大きく、背中を握りながら「渓流釣り」とはどんな遊びなのだろうかと、期待でわくわくしていた。田畑の中の道を、まっすぐ山の方向へ向かった。私の家は、目の前が太田川という場所にあったが、親父はこの日、もっと違う魚が棲む場所へ行くと言った。父のこぐ自転車は、一路、山を目指した。風を逆らって走る自転車、蝉のなく音、蝶々やトンボの姿、あの日の光景は今も蘇る懐かしい記憶のひとつだ。
そして、到着したのは、山の中の小さな沢。親父は私にこう言った。「いいか、正巳。魚に気取られるなよ」。
「気取られる」己の姿を相手に知られる。「魚に自分の姿を見られるなよ」、父はそう言ったのだ。漁の基本、猟の基本でもある。対象とする相手に自分の姿を見破られないこと。大きな岩の後ろ、木の陰、草の間、とにかく自分の身を隠しながら、釣りをするんだ。幼かった私は、その大切な「戒め」の、真の意味もわからなかったが、私なりに工夫して、大きな岩を探し、その裏に隠れた。足音も立てないよう、抜き足、差し足。私の影が川に差し込むことにも注意し、慎重に歩いた。そんな、私の肩越しに、父がゆらりと竿をふる。何度ふっただろうか、何度めかに、ラインがキリッと音を立てた。
父は微笑みながら私を見ると「やったぞ」と、言った。
ラインをたぐり寄せると、キラキラと輝く美しい魚がかかっていた。私が初めて見た、渓流魚「アマゴ」だった。朱点が美しい、日本の渓流魚の女王。
遠州一帯では、アマゴを「アメ」と呼んでいた。アメ、アメノウオ、雨の魚、雨の日によく釣れる魚だと言われていた。
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この日の経験が決定的となり、私は生涯をかけてこの魚の虜となるのだが、今回の本題は、アプローチ。
だから私のアプローチのなかで、最も大切なのは、父から学んだ「気取られない」ことだ。これは、ほかの職業漁師たちと同じ。また、山で鹿や猪、熊を追う猟師たちとも同じ。凡ての漁の基本ではないか。テンカラ、ルアー、餌釣り、釣法を超えて、大切な基本中の基本だ。魚に自分の姿を気づかれないこと。
魚がたくさん泳ぐ川だから、そんなこと必要ない、という意見の方もいる。けれども、そういう川へ何度も釣りに行くが、釣果に差が出ることはないだろうか。今日は20匹釣れた、この前は5匹だった、そのまた前は30匹。なぜこの差が出るのか。
たまたま魚の食い気がたっていた日に遭遇したから? たまたま、偶然釣れたから?
私は、そういうあいまいな考え方をしない。自分の釣りは、徹底的に分析してきた。
その結果、「自分の姿が気取られないこと」、ここが釣果の分岐点のひ・と・つ(ほかにもある)であるという、考えに至った。
だから、魚のたくさん泳ぐ川なのに、釣果に差が出ることの答えの一つに、「気取られて」しまったということはないか。
川を歩くときに、バシャバシャと、大きな音を立てない。静かに、波も立てないように歩く、大きな岩や木の陰に隠れながら、自分の姿を隠すことが第一。
次に、釣る前に川をじっと眺め、分析すること。魚のいる位置、それを釣るには、どう毛鉤を落とせばいいのか、を考え、順番を立てる。
そして、毛鉤をふわりと落とすナチュラルドリフト。魚が虫を捕食するように素直な姿で、出てくれるような毛鉤の落とし方。これができれば、釣果はぐっとあがるはずだ。
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原稿量をオーバーするので、少しにするが、いい機会なので書いておく。
アメリカのテンカラ師たちの間で、やたらに山本素石をとりあげているが、彼は、1922年滋賀県生まれの随筆家。私の父とほとんど同じ時代を生きた人だ。良いテンカラ師であったという、なによりも「テンカラ」という釣り方を世に広めた方。職業漁師の姿を見て、それを美しい文章で綴った文筆家だ。アメリカの方々が、知るべきなのは、職業漁師の釣りだ。山本素石ではない。何もない時代に、毛鉤を考案し、竿をつくり、ラインをつくりあげた、職業漁師が凄いのだ。日本の各地の山々に存在した、山の庶民たち。彼らがたどり着いた、すべてをそぎ落としたシンプルな技術。それこそが、素晴らしいテンカラそのものだと、私は考える。
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※注A 静岡県周智郡森町北部に源を発し、磐田市、袋井市を南流、遠州灘に流れ込んでいる。支流は、掛川市、袋井市などを流れている。延長 44km
一人にはりつくべったり鬼塾は、いつもやっています。
メールか電話をください。場所など、話し合いましょう。
一人にはりつく「べったり鬼塾」は、グループの場合、割り引きます。
1人1日 15000円(他に交通費、遊漁券)などが必要です。
けれども、天候によっては前後することもあります。開催日近くに、
変更はお知らせすることになります。
参加希望者は、いまから予定を空けておいてください。
参加希望者は榊原事務局 090・2575・0903
もしくはメール 榊原事務局 onitenkara@gmail.com
まで、お名前、ご住所、連絡先、テンカラ歴をご記入の上、お申し込みください。
迷っていらっしゃる方も、とりあえず電話ください。詳しく説明します。
静岡・芝川
2日 10000円 1日6500円
他に遊漁券が必要です。
初日のお昼ごはんつきです。蕎麦です。
宿泊は、近くのキャンプ場コテージにします。
宿泊代 1人 3250円必要です。
夕飯は、皆で手分けして作ります。
長野 遠山川
2日 10000円 1日 6500円
他に遊漁券代が必要です。
初日のお昼ごはんつきです、たぶんそば。
宿泊は、キャンプのようなかんじです。
岐阜 白川郷
2日10000円 1日6500円
他に遊漁券代が必要です。
宿泊は白川郷の合掌造りの建物になる予定です。
値段などは、調整中です。
石徹白アウトドアフェス
詳細は、調整中です。
石徹白鬼塾は、ほかの日にももっと増えます。
宿泊は、村内の民宿
山形
2日 10000円 1日 6500円
他に遊漁券が必要です。
今年は、宿泊にしようかな?
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7月15日(土)16(日)?
岐阜・秋神川
2日 10000円 1日 6500円
他に遊漁券が必要です。
コテージをおさえます。
岐阜 石徹白
2日 10000円 1日 6500円
他に遊漁券が必要です。
宿泊は民宿です。
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9月30日(土)
納竿会 遠山川
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