テンカラの鬼 榊原正巳 テンカラの世界

鬼ブログ

海外向けに書いた原稿

Posted on | 1月 30, 2017

鬼塾開催予定(2017/1/30現在)

 

  海外のTENKARA USA というテンカラ竿メーカーが、テンカラの本を作るので、原稿を書いてね、との依頼が昨年あった。本にのせるので、他では紹介しないでと、契約書にサインまでさせられた。

 その原稿が、ようやく期限が切れお見せできるようになったので、紹介しておく。

 あっ、私は口で話しただけで、書いたのは鬼嫁です。

彼女のほうが早い。

 さて、今年もフィッシングショー大阪へ行きます。2月の4日の土曜日を予定しています。鬼竿を触ってみたい方、連絡ください。下記のアドレスまで連絡ください。

もちろん、買わなくてもいいですからね、気楽にどうぞ。下は、原稿です。

 

気取られるな!(けどられるな) 

語り手 榊原正巳  代筆 鬼嫁

 

????? 私のアプローチの一番大切な部分は、すべて父から教わったものばかりだ。

私の父、榊原芳男は、とても優秀な機械職人であり、そして、家族をとても大切にする人であった。

 父、芳男は、大正111922年)生まれ。第二次世界大戦にも召集され、国の一兵として従軍している世代だ。

 日本が敗戦した昭和20年(1945年)頃に父は結婚し、戦後の食糧難の時代に、大勢の家族を養った。戦後の日本は、都市部ではそれは厳しい生活を余儀なくされたが、私が生まれ育った静岡県榛原郡森町(遠州森町)は、遠州の小京都と言われる、静かな田舎町だ。田畑が延々と続き、海へと続く太田川(日本の二級河川 ※注A)が流れていた。当時の森町は、空襲の被害を受けていなかったので、田畑では野菜が採れ、川からは鮎やアマゴ、ウナギなどの川魚が獲れた。

 

 私は1951年生まれ。焼け跡から復興し、国民総生産力(GNP)が世界第2位にまで飛躍するようになった、日本の高度成長期(1954年?1973年)真っ只中に、幼児期から青年期までを過ごしている。日本中がヒステリーになり、「働け」「働け」という時代、父もその一人で、懸命に働いた。けれども、たまの休日には家族を大切にし、長男である私とよく遊んでくれた。

 

 

 

 

 あれは、10歳の頃だったか。「まさみ、渓流釣りに行くぞ」

大きな荷台のある自転車の後部席に私をのせ、親父は黙って自転車をこいだ。小さかった私には父の背中はとても大きく、背中を握りながら「渓流釣り」とはどんな遊びなのだろうかと、期待でわくわくしていた。田畑の中の道を、まっすぐ山の方向へ向かった。私の家は、目の前が太田川という場所にあったが、親父はこの日、もっと違う魚が棲む場所へ行くと言った。父のこぐ自転車は、一路、山を目指した。風を逆らって走る自転車、蝉のなく音、蝶々やトンボの姿、あの日の光景は今も蘇る懐かしい記憶のひとつだ。

 そして、到着したのは、山の中の小さな沢。親父は私にこう言った。「いいか、正巳。魚に気取られるなよ」。

 「気取られる」己の姿を相手に知られる。「魚に自分の姿を見られるなよ」、父はそう言ったのだ。漁の基本、猟の基本でもある。対象とする相手に自分の姿を見破られないこと。大きな岩の後ろ、木の陰、草の間、とにかく自分の身を隠しながら、釣りをするんだ。幼かった私は、その大切な「戒め」の、真の意味もわからなかったが、私なりに工夫して、大きな岩を探し、その裏に隠れた。足音も立てないよう、抜き足、差し足。私の影が川に差し込むことにも注意し、慎重に歩いた。そんな、私の肩越しに、父がゆらりと竿をふる。何度ふっただろうか、何度めかに、ラインがキリッと音を立てた。

父は微笑みながら私を見ると「やったぞ」と、言った。

 ラインをたぐり寄せると、キラキラと輝く美しい魚がかかっていた。私が初めて見た、渓流魚「アマゴ」だった。朱点が美しい、日本の渓流魚の女王。

  遠州一帯では、アマゴを「アメ」と呼んでいた。アメ、アメノウオ、雨の魚、雨の日によく釣れる魚だと言われていた。

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  この日の経験が決定的となり、私は生涯をかけてこの魚の虜となるのだが、今回の本題は、アプローチ。

 だから私のアプローチのなかで、最も大切なのは、父から学んだ「気取られない」ことだ。これは、ほかの職業漁師たちと同じ。また、山で鹿や猪、熊を追う猟師たちとも同じ。凡ての漁の基本ではないか。テンカラ、ルアー、餌釣り、釣法を超えて、大切な基本中の基本だ。魚に自分の姿を気づかれないこと。

 魚がたくさん泳ぐ川だから、そんなこと必要ない、という意見の方もいる。けれども、そういう川へ何度も釣りに行くが、釣果に差が出ることはないだろうか。今日は20匹釣れた、この前は5匹だった、そのまた前は30匹。なぜこの差が出るのか。

 たまたま魚の食い気がたっていた日に遭遇したから? たまたま、偶然釣れたから?

私は、そういうあいまいな考え方をしない。自分の釣りは、徹底的に分析してきた。

その結果、「自分の姿が気取られないこと」、ここが釣果の分岐点のひ・と・つ(ほかにもある)であるという、考えに至った。

 だから、魚のたくさん泳ぐ川なのに、釣果に差が出ることの答えの一つに、「気取られて」しまったということはないか。

 川を歩くときに、バシャバシャと、大きな音を立てない。静かに、波も立てないように歩く、大きな岩や木の陰に隠れながら、自分の姿を隠すことが第一。

 次に、釣る前に川をじっと眺め、分析すること。魚のいる位置、それを釣るには、どう毛鉤を落とせばいいのか、を考え、順番を立てる。

 そして、毛鉤をふわりと落とすナチュラルドリフト。魚が虫を捕食するように素直な姿で、出てくれるような毛鉤の落とし方。これができれば、釣果はぐっとあがるはずだ。

 

 

 

 

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 原稿量をオーバーするので、少しにするが、いい機会なので書いておく。

アメリカのテンカラ師たちの間で、やたらに山本素石をとりあげているが、彼は、1922年滋賀県生まれの随筆家。私の父とほとんど同じ時代を生きた人だ。良いテンカラ師であったという、なによりも「テンカラ」という釣り方を世に広めた方。職業漁師の姿を見て、それを美しい文章で綴った文筆家だ。アメリカの方々が、知るべきなのは、職業漁師の釣りだ。山本素石ではない。何もない時代に、毛鉤を考案し、竿をつくり、ラインをつくりあげた、職業漁師が凄いのだ。日本の各地の山々に存在した、山の庶民たち。彼らがたどり着いた、すべてをそぎ落としたシンプルな技術。それこそが、素晴らしいテンカラそのものだと、私は考える。

  

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※注A 静岡県周智郡森町北部に源を発し、磐田市袋井市を南流、遠州灘に流れ込んでいる。支流は、掛川市、袋井市などを流れている。延長 44km

 

 

 

 

 

 

2017年の鬼塾予定です
一人にはりつくべったり鬼塾は、いつもやっています。
メールか電話をください。場所など、話し合いましょう。
一人にはりつく「べったり鬼塾」は、グループの場合、割り引きます。
1人1日 15000円(他に交通費、遊漁券)などが必要です。
グループで学ぶテンカラの鬼塾は以下です
けれども、天候によっては前後することもあります。開催日近くに、
変更はお知らせすることになります。
 参加希望者は、いまから予定を空けておいてください。
参加希望者は榊原事務局 090・2575・0903
もしくはメール 榊原事務局 onitenkara@gmail.com
まで、お名前、ご住所、連絡先、テンカラ歴をご記入の上、お申し込みください。
迷っていらっしゃる方も、とりあえず電話ください。詳しく説明します。
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3月19日(日)20日(祝)
静岡・芝川
2日 10000円  1日6500円
他に遊漁券が必要です。
初日のお昼ごはんつきです。蕎麦です。
宿泊は、近くのキャンプ場コテージにします。
宿泊代 1人 3250円必要です。
夕飯は、皆で手分けして作ります。
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4月8日(土)9(日)?
長野 遠山川
2日 10000円 1日 6500円  
 他に遊漁券代が必要です。
初日のお昼ごはんつきです、たぶんそば。
宿泊は、キャンプのようなかんじです。
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5月20(土)21(日?
岐阜 白川郷
2日10000円 1日6500円
他に遊漁券代が必要です。
宿泊は白川郷の合掌造りの建物になる予定です。
値段などは、調整中です。
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6月3(土)4(日)
石徹白アウトドアフェス
詳細は、調整中です。
石徹白鬼塾は、ほかの日にももっと増えます。
宿泊は、村内の民宿
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6月24(土)25(日)
山形 
2日 10000円 1日 6500円  
 他に遊漁券が必要です。
今年は、宿泊にしようかな?
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7月15日(土)16(日)?
岐阜・秋神川
2日 10000円 1日 6500円  
 他に遊漁券が必要です。
コテージをおさえます。
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9月16日(土)17日(日)
岐阜 石徹白
2日 10000円 1日 6500円  
 他に遊漁券が必要です。
宿泊は民宿です。 
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9月30日(土)
納竿会  遠山川
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