証言1
木村一成
フィルターを通して真の釣り人を見つめる
木村一成
カメラマン。趣味はテンカラ。テンカラ歴は25年。
著書に「テンカラ狂想曲」(人間社)1999年「名人達の釣り道具―川を愛するすべての人へ」(人間社)1998年などがある。名古屋ビジュアルアーツ講師。木曽を中心に東海地方の各地を釣り歩き、地方の名人たちから数多くを学んだ。「聞く耳を持つ」、カメラマンだ。
道具 竿 SHIMANO 本流テンカラ 鬼竿の古いタイプ 4、5m
ライン フロロカーボン 2号~4、5号 6mぐらいをよく使う
毛鉤 #6~#18
言葉の深い人
私が初めて榊原さんに出会ったのは、1999年の春でした。
それまで、榊原さんの噂は聞いていました。「テンカラの魔術師」「大毛鉤の大胆な釣法」「鬼のように怖いらしい・・・」
ドキドキしながら会いましたが、笑顔の可愛いやさしい人だな、という印象を受けました。もちろん釣りを見た後は、皆が言うように「魔術師」であり、「大胆な大毛鉤」だし、噂の通りでもありました。
あれから何度もお会いして感じるのは、“すごく言葉の深い人だな“、ということです。言われた言葉で忘れられないのが、「毛鉤にエサ以上の働きをさせる」という一言。
得心しました。すごく気分が軽くなった。
それまで、私はテンカラがだいすきなんだけれども、餌より釣れない、と言われると、まぁその通りで、でも、テンカラの面白さは、そういうところで餌釣りと比較されても仕方がない、もっと別の部分に面白さがあるんだ、と忸怩たる思いがあったわけです。それを、榊原さんの言葉を聞いて、その通り! だと、心を軽くしてもらったわけです。
テンカラは毛鉤ですから、そりゃあ生の餌よりおいしそうではない。だけど、そうじゃない。毛鉤に餌釣り以上の働きをさせることで、おいしそうに見せてしまう。それは、“誘い”であったり、“流し方”であったり、臨機応変ですが、とても得心させられた。テンカラという釣りに自信がもてた瞬間でした。
そして、榊原さんは、もちろん日本一魚を釣る男だと思いますし、キャスティングも、毛鉤も、テンカラと言う釣りへも「まっすぐ」な人です。まっすぐ投げる、まっすぐ生きる、
テンカラの道へ、さらにさらに、まっすぐです。
<渓流に挑む魔術師> 撮影:木村一成